【格ゲーとプロvol.1】格闘ゲームのプロにコーチや監督がいないのは何故か?答えは「変わる存在があるから必要ない」からだ!

STREETFIGHTER V

自分はプレイヤーとしては動画勢に毛が生えた程度だけど、プロアマ含め格ゲー含め色々なゲーム配信を見るのが好きなことと、普段から他分野とはいえ「プロ」の人とコミュニケーションをとっているため、感覚的に語れることがあると感じたので、「格ゲーとプロについて」好き勝手書いてみます。ざっくりいうと内容的にはスト5を例として格闘ゲームのプロを褒めるような内容です。

・まず「プロ、プロフェッショナル」とは何を指すか?定義から。直訳に近い解釈だと、「専門的な仕事」を指す。個人的に「プロ」とは、「その人をもとに仕事が生まれること、生み出すことができる人」だと思っている。その人を中心にイベントや企画(仕事)が成り立つ、生まれること。スポンサーを得る事が出来るのもプロ。スポンサーがついてればプロというわけではないけれど。一つ手前の状態の場合もある。この「仕事を生み出す」のハードルはかなり高い。もちろん世間の「プロ」の定義はライセンスを持っている等、解釈は色々あってよい。

・本題。他のプロの分野を見てみると、そこには必ずコーチや監督、トレーナー等の存在がある。スポーツの監督もそう。野球では監督に加え、ピッチングやバッティングのコーチが別にいる。個人のスポーツでもコーチはいる。他のゲームで一番わかりやすいのがFPSの「Valorant」。5人チームのゲームだけど、世界大会レベルでは6人目のコーチを入れて6人のチームなことがほとんど。コーチや監督の客観的な視点は、個々の選手のコンディションや相手の状況、全体としての流れを判断する、勝利への材料になる。主観的な視点だけでは絶対にわからないものがある。

格ゲーのプロの世界にはコーチや監督が存在しない。何故コーチがいないのか?コーチがいないから、攻略に客観性が乏しく、安定性に欠けるのではないかと思っていた。でもそれはスト5のシーンを追っていった結果、間違いだった。格闘ゲームにコーチや監督は必要ない。ゲーミングチームのような団体で、外から日々の生活を見守るレベルの広い意味ではいてもいいかもしれないけど。

・格闘ゲームのプロは他のジャンルのプロと違った構成をしている。

スト5の競技シーンの一つに、ストリートファイターリーグ(以下SFL)がある。格闘ゲームはほぼほぼ個人戦だが、SFLはチーム戦。はじめてのSFL(2019)は3人のチーム戦で、ゲームをちょっとやったことある程度の人、結構うまい人、プロゲーマーの3人のチームで、普段の1VS1とは違った楽しみ方を提供するという意味でのエンタメ的な要素が強かった。そこから普段使っているキャラを禁止するBANシステムなどを経て、結果「やっぱりプロゲーマー同士のガチ対戦が一番面白い」という事になって、今のルールに。素人のサッカーや、プロ野球選手のサッカーは公式で無いところでやればいい。今はそれが自由にできる時代でもある。

今のルールはホーム&アウェイ方式で、アウェイ側が4人中3人から先に選手とキャラを決めて、ホーム側がその相手に行けそうな選手やキャラを出す。アウェイ側が何のキャラを出してくるかを想定し、ホーム側は基本的に各相手の担当を決め、それぞれ相手に対する対策を詰める。キャラ対策を含めたキャラ練度のぶつかり合い。苦手なサブキャラを出すかぶせの要素はあるものの、メインキャラで相手に対する練度を上げることが多い。トッププロではキャラ相性よりもキャラ練度が重要なゲーム。スト5は度重なるアプデにより”配慮”が行き届いているゲーム。詰む要素が無いとは言わないが、少ないゲーム。解決策となるパーツが用意されている。困難の差はあれどキャラ相性も自キャラの練度で何とかできるであろうと。

今のSFLでは、相手キャラの対策に「スパーリングパートナー」も存在する。相手キャラと同じキャラの使い手を募って、そのキャラに対する対戦練度を上げる。SFL参加者を問わず。次回の記事でがっつり名前を出すが、ときど氏は「このゲームでは全一(そのキャラを使う人間の中で一番強い)ことが重要」と語っていた。全一、全一に匹敵する実力でないと、対戦することはあってもパートナーとしては呼ばれない。パートナーとなりコミュニケーションをとる事で、選手はもちろんパートナー側の実力も上がっていく。

さらにスト5はリプレイ機能がかなり優秀である。制限はあるものの、オンラインで行われたすべての対戦を第三者が自由に閲覧できる。完全ではないがキーディスプレイ(どんな入力をしているか?)も表示され、それを1フレームという細かい単位でコマ送りもできる。対策を相手側が見ることで、対策の対策も仕上がっていく。純粋なチームメイトからのアドバイスなどもあり、相乗効果で参加者全員の実力も上がっていく。これらは十分にコーチや監督の役割を果たしている。つまり「コミュニティがコーチの役割を果たしている」のだ。

・最近行われているスト5大会の上位は、スパーリングパートナー含めほぼSFLの参加者、キャラが占めている。公式大会のルールはBO3の勝ち上がり、2ラウンド2本先取で、勝敗を決めるにはあまりに短い。短い決戦にはいろいろな意味で運の要素が絡む。にもかかわらずTOPに上がるのがいつものメンツなのは、「コミュニティに強く属する人間が強いから」。練習での対戦相手が疑似コーチのような存在となり、自身の癖や悪いところを教えてくれる。対戦相手でなくても、コミュニティが教えてくれる。

これは格ゲーの上位勢において「昔からそうだった」と思われる。昔のコミュニティは必然的に今よりもっと濃い。リプレイはおろかトレモすらない、もっと言えば家ですらプレイできず主なプレイは1プレイに必ず料金がかかり、かつ相手(他人)がその場にいるゲームセンター。さらには世間にも認められていない”異常”なもの。だが、その異常なものだからこそ、濃く、熱量も高く、現代まで届いているように感じる。他人なこともあり今のように教え合うようなことは少なかったかもしれないが、それもまた成長を促す要素。

「コミュニティが味方か敵なのかはっきりしない」のも面白い。個人戦である以上、結果的には絶対「敵」だ。「昨日の敵は今日の友」やその逆が頻繁に起こる。それが「因縁」と言葉を変えて、対戦に現れる。プレイヤーにとって一番大事なことは「自身が強くなること」。そこは全員そう。自身が強くなることによってコミュニティごと強くなる。そこがプレイヤーではないコーチを採用する他の競技との大きな違い。格ゲープロの独自の文化になっている。

・ただ、「コミュニティに強く属する人間が強い」のは事実だが、そう完全に決めつけられないのも格ゲーの面白さ。特に海外大会では日本の突き詰められた強さとはまた違った、「その時勝ったほうが強い」を地で行くような選手がたくさんいる。日本の突き詰められた強さ、相手になれ過ぎて、イレギュラーのような相手に対応しきれなく負けてしまうこともある。短期決戦の妙。見ている側としても大番狂わせ・ジャイアントキリングを望む人間も多い。「決めつけは弱い」。対戦でもいえる事。

プロの世界の中でも、独自の世界を作り上げている格ゲープロの世界。今後、コーチを採用するような事もあるかもしれないが、個人的には他の世界にはない要素を「面白い」と思うので、「コミュニティが強い」を可能な限り続けてほしい。

次回予告。数回に分けて個人のプロゲーマーにスポットを当て、そのプロゲーマーが何故強いのか?妄想と結果論から語る。第一回は「ときど」氏と、相反するとは言わないまでも平行線のタイプの「ももち」氏。

【格ゲーとプロvol.2】格ゲープロの強さについて考える「ときど」「ももち」編。スペシャリストとゼネラリスト!基本と応用は循環する!
格ゲーはプレイヤーが一人の人間なこともあり、ほかのゲームに比べ、プレイヤーの思考、性格、その人そのものが表に出やすく、それをいろんなところで感じられるのも面白い。配信や攻略、言動を客観的に見て、このプロゲーマーはこういう理由で強いのではない...

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